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青山にあるNHK文化センターでチーフプロデューサーを務める浜谷修三氏は、元NHKの報道カメラマンでハイビジョン導入の検討なども行っていた。ビデオの創生期からすべてを見てきた氏は現在、後進のために教室を開いて教鞭を執っている。今回はビデオテクノロジーが辿ってきた変遷から最新のHDV規格までいろいろと伺ってみた。

浜谷さんのブログ

【アナログ時代からHD時代へ】

浜谷さんは、ビデオ時代のすべてを現場で体験されてきた人。そのプロフィールは、そのままビデオの歴史といってもよい。

− 浜谷さんがNHKで仕事を始められたのは、いつのことですか?

昭和45年からカメラマンをしていました。

− 昭和45年というと、記録はフィルムですか?

そうですね。フィルム時代でした。昭和45年というとまだ一般では録画手段はなかった頃ですね。VHSとベータマックスが出始めたのが昭和50年でしたから…。録画するにはU-Matic(3/4インチ)を使わなくてはなりませんでしたね。それからしばらくしてベータカムが出てきました。

U-Maticデッキ
− U-Maticは懐かしいですね。当時はまだ編集も思いっきりリニアでしたね。

ええ。当時の編集はいまから考えると寝ぼけたような、信じられないほどに非効率的なものでしたね。編集のやる気が起こらないような…(笑)。編集をしたらどのような絵になるのか、という感じで…。

− でもプロとしては、どんなシステムであろうとそれなりの完成品を作らなくてはなりませんね。

それはそうです。ただその頃の僕は会社ではプロの仕事をし、うちに帰ればアマチュアとしてと、ちょっと微妙な立場でもありましたね。

− 10年ほど前からデジタルが登場してきて、ここ5年くらいでようやく熟成してきた感がありますが、その前は主にベータカムですか?

ベータカムの前にHi-8がありましたね。サブカメラとしては結構使われたのですけど、でも本格的にプロ用として認知されたわけではありませんね。そのあとすぐにベータカムが入ってきて、画質で差が出てきましたから。さらにそのあとDVが出てきまして、解像度からすればベータカムと同じなんですよね。DVになって初めてプロのサブカメラとしての認められるようになりましたね。

− そしてハイビジョンが出てくる、と。確かソニーがHDCAMを出したのが1997年だったと思いますが?

ええ。そのすぐあと…いまから5〜6年ほど前のことになりますが、NHKでハイビジョンカメラを導入することになりました。これは地上波デジタルをにらんでのことです。機種の選定については、1年ほどかけて検証をいたしまして、結果的にはそのソニーのHDCAMが導入されることになりました。

【DVノンリニア編集に注目】

ビデオはアナログ時代を経てデジタル時代に入る。浜谷さんはその初期からデジタルのテクノロジーに注目されていたという。

DVRex-M1
− カノープス製品と出会われたのはいつ頃のことですか?

カノープス製品との出会いは8〜9年前のことですね。DVRex-M1が初めでした。僕は最も初期のユーザーの一人だと思います。DVRex-M1は業務としてDVノンリニア編集ができる国内で最初のボードだったと思います。これが初めてDVコーデックを使ったものでした。

− かなり昔からカノープス製品を使われていたわけですね。

ええ。それ以前は海外製の MotionJPEG が使われていたものばかり使っていました。しかし、よく止まってしまったりして、仕事レベルでは確実性がなかったんですよ。僕は DVコーデックが出てきた時に、これは使えるなと直感しました。DVRex-M1が出た時がDV元年だと思いますね。

− 具体的にはどのあたりが使えると思われましたか?

ベータカムの解像度が540本で DVも最高で540本。ベータカムをアナログ編集していくと、オンエア時には孫テープ画質になります。地方局で編集されてから東京に送られてくるようなものは曾孫テープになってしまいます。ということは、DVのデジタル編集で540本の解像度を確保できれば、ベータカムとも勝負ができるということになります。そのあたりが使えると思ったポイントですね。実際、アナログとデジタルとが混在しても、クォリティ面での差はないという時代がありました。いまはそこにハイビジョンが入ってきましたので、状況は変わってきましたけど、いずれにせよデジタルはパソコンと馴染みやすいという特性がありますのでそこが大きな強みですよね。

− 実際に現場でも使われたのですか?

使いましたね〜(笑)。RexEdit やStormEditといったソフトウェアはNHKの報道でも使ったんですよ。八丈島にDVカメラとパソコン(DVStormマシン)を持っていき、取材後すぐに編集して伝送、翌日にはオンエアといったことを2年ほどやっていました。昔ながらのリニア編集ではそんなにスピーディーにはいきません。これはもうDVカメラとパソコンだからこそできたことですね。

− DVカメラとパソコンが仕事の形態を変えてくれたわけですね。

そうですね。僕が思うにカノープスの功績は、DV用ハードウェアコーデックを載せたボードを製品化し、そのボード上のハードウェアで圧縮処理を行うことで、Pentium 3の1GHz程度といった当時のパソコンでも、デジタルの編集作業を可能にしたことでしょうね。デジタルの魅力はスピード、軽量化などいろいろありますが、カノープスは理屈ではなく、それを現実で身近なものとしてもたらしてくれたのです。

【HDVの登場に衝撃】

ソニーをはじめとする国内のビデオメーカー4社が共同して開発したHDV規格。カノープスも賛同しているこの規格が登場したときには、浜谷氏も大きな衝撃を受けたという。そのあたりの話を伺ってみよう。

− HDVについてはいつ頃お知りになったのですか?

HDVカメラで実際に撮影したのは2004年の8月のことでした。実際に使ってみて、ちゃんとハイビジョン画質で映るっていうことが実感できましたね。しかし、そのクォリティを保った状態での編集が難しいな、という感想も抱きました。

− といいますと?

HDVカメラは非常にいい製品だったので放送でも使いたいと思ったのですが、記録方式がMPEG2では難しいところが多かったのです。MPEG2は本来保存用の規格のため編集には不向きなんですね。でも、その問題をカノープスが技術で解決してくれたと思います。

− 具体的にはどのあたりの技術がよかったのでしょう?

まずはコーデックの優秀さですね。それから各種の処理をどのようなワークフローで行うかということが大切なのですが、その部分がカノープス製品ではよくできているのだと思います。ハード、ソフトの両方を一社で開発しているカノープスのよさが表れていると思いますね。

− カノープスのHQコーデックは、非常に評判が高いですね。

ええ、業界内でも評判です。HDVの規格が25メガ、HDカムの140メガぐらいのビットレートですが、カノープスのコーデックはそれよりもかなり高いところまで行くことがあるのに動作はとても軽いのです。これはすごいことですね。

− 編集システムも着実に進化してきていると。

ハイビジョンのクオリティがこんなに簡単に編集できるというのはプロの世界でも驚きですね。HDVカメラが出て、画質をチェックした時にはびっくりしましたね。これは革命だと思いましたよ。

− 革命ですか。クオリティ以外のHDVの魅力はどういったものでしょう?

まずは値段です。HDカムは700〜800万円、それがHDVカメラは40万円程度。その違いはマスターモニターではわかるものの、家庭用のプラズマなどで見た場合にはまずほとんどわかりません。他には小さい、軽いということも挙げられますね。

− よいことずくめのHDV規格ですね。

問題は放送規格とどのようにつなげるか、つまり最終的に何に出力するのかということなのですが、それに一つの答えを出したのが、カノープスの REXCEED MODEL3000VELXUS 500 という製品だと思います。たとえば、アナログコンポーネントから出してA/D変換すれば、リアルタイムで放送の方へ持って行けるのです。変換器をかます必要はありますが、リアルタイムで出せるところは大きな魅力ですね。

【プロだからこそ、安定度とスピードが重要】

浜谷氏は、会社もご自宅も VELXUS 500 を入れたシステムで統一されているという。カノープス製品について、プロにとって欠かせないポイントなどをいろいろと指摘してもらった。

− 現在はどういったシステムで編集作業をされていますか?

僕は自作マニアなので、会社も家も VELXUS 500 を組み込んだ自作マシンです。Windows XP SP2にハードウェアRAIDを組んでいますが、動作は非常に安定していますね。HD、SD混在で編集していますが、エフェクト時に多少の時間がかかることもありますけど、通常の編集には何も問題は感じません。素材の取り込みについても全く問題なしです。

VELXUS 500を組み込んだ浜谷さんの自作PC

− 出力は?

DVにダウンコンバートして出す場合が多いです。HDで見られるケースがまだまだ少ないので…。HDで出力する場合には、Windows Mediaフォーマットにすることが多いですね。

− 安定度は重要ですよね。

プロの現場はもちろんですが、一般の方でも安定度はとても重要だと思います。そうした意味ではオールインワンの REXCEED MODEL3000 は非常にいいと思いますね。現時点では HDV編集を業務的にやれるシステムの中では、一番現実的な選択が REXCEED MODEL3000 であり、VELXUS 500 だといえますね。ハイビジョン編集をしながらモニタリングができるというのは他にはないと思いますね。

− リアルタイムというのも重要ですね。

リアルタイムでモニタできるシステムはなかなかないんですよ。先ほども申し上げましたが、出力でもリアルタイムが大切ですね。HDVに戻すということになると2〜8倍ぐらいの時間がかかってしまいますが、放送規格に出す場合ならアナログコンポーネントから出してA/D変換すれば、リアルタイムで放送の方へ持って行けるのです。そこに REXCEED MODEL3000 などの価値があると思います。変換器をかます必要はありますが、リアルタイムで出せるところは魅力です。
ちなみに、HDカムのデッキにダイレクトにつなぐことができて、HDもSDも混在させてリアルタイムに編集ができる HDWS-1000 は、ローカル局などにはインパクトがありますね。

− VELXUS 500 や REXCEED MODEL3000 には、ポストプロダクションやローカルのCATV局なども注目しているのですが、導入するメリットはありますか?

十分にあると思いますよ。導入してもコスト回収にはさほど時間はかからないと思います。というのも、近い将来にハイビジョン化していくであろう流れを考えれば、REXCEED MODEL3000 や VELXUS 500 を早いうちに導入し、現場で使い込んで慣れておく必要もあると思います。おそらく5年以内にはそういう時代になると思いますね。

− 今後、HDVはどうなっていくと思われますか?

ハイビジョン対応液晶やプラズマなどが安くなってきたからには、そこに映し出される映像にも非常に高い画質が要求されますよね。たとえば、東北地方は今年(2005年)末には、地上デジタル放送がスタートします。でも、すべてがHDCAM でいくのかというとそうとはいえません。HDVでいく部分もあると思います。共通しているのは、4対3のSDではなくて16対9の高画質が求められているということだけです。それをコスト的に解決するのはHDVしかないのです。いずれにせよ VELXUS500 なり REXCEED MODEL3000 を導入しておけば間違いはないと思いますね。

講義のリハーサルをする浜谷さん
【プロだからこそ、安定度とスピードが重要】

さまざまな最新システムを実際に試してこられた浜谷氏によれば、いま業界で最も高い注目度を集めているのがHDV規格であり、そして他に先駆けてそれに完全対応したカノープス製品だということだ。
次の世代のプロを目指す人たちも多く集まる浜谷氏の講座では4月からハイビジョン & HDV撮影・制作講座が始まってる。もちろんそこには VELXUS 500 が組み込まれたPCが使われている。浜谷氏の今後のさらなる活躍に期待したい。