Home > システム導入事例

石川県金沢市に拠点を置く「北陸朝日放送株式会社(HAB)」様では、ニュースをはじめとする複数の番組で、撮影から、編集、送出に至るまで、すべてをテープレスで行う新報道システムを導入し、2007年10月から運用を開始しました。 撮影には松下電器のP2カメラを採用し、編集システムとしてカノープスのK2 EDIUS Shareを導入。送出システムにはグラスバレーのK2と、松下電器のOTCが使用されています。これらは西日本コンピュータの報道支援システムと連携し、効率的な運用を実現しています。

お話を伺った技術部の北川嘉市郎氏

− 導入のきっかけを教えてください

導入に際し、選択肢や条件が多々あり、各社にデモンストレーションをしていただき、その中から選択しました。現在AVIDを使っていますのでAVID以外を選択すれば2種類のノンリニア編集機を使うことなります。そのため運用者が戸惑うことなくすぐに使えるシステムが重要でした。
また、報道用途がメインですが、制作的なところも行うこともあり、報道・制作の両機能が不可欠で、かつノンリニア編集機単体としてきちんと使えるシステムであることも重要なポイントでした。
実際に、運用者に各社の製品を触らせてみたところ、スタンドアローン編集機としてカノープスのシステムへの評価が一番一番高かったわけです。

− HD化、ネットワーク化、主に報道における運用支援といった観点から見て、K2 EDIUS Shareは如何でしょうか?

まず、報道用映像フォーマットとして松下のP2を選択しました。当然そのフォーマットに対応したノンリニア編集機である必要がありましたし、素材サーバー(K2 EDIUS Share)の実力もネットワーク化という意味では、重要なファクターであり、比較対象でもありました。
それと、ネットワーク化ということでは、報道支援システムとの連携も必要でサブも含めた報道支援となると、カメラと編集機、素材サーバーとの間でのデータのやりとりを行う必要があります。 報道支援システムと連携することを前提にノンリニア編集機を選定し、松下のP2との連携も強いということで、カノープスの編集ソリューションということになりました。

このメーカー各社の連携という選択は、希望の形をきっと実現してもらえるはずだと判断していしました。カノープスは国産メーカーであり、その動きを見ていますと、開発進度が速くどんどん期待に添うようなシステム構築がしてもらえるだろうという期待感もありました。

− 編集中心のフローでないと、オンエアまでスピーディにつなげないというところがあると思いますが、フロー的にはどうでしょうか?

まだ、細部にわたっての全ての機能を運用者がマスターしたわけではないですが、運用しながら工事を進めていかなければならず、報道編集に必要なレベルは早くマスターして仕事がこなしていかねばなりません。そこで、最初の設備を入れてから、最長で2週間弱で操作を覚えてもらうというスケジュールを組みました。不安感が全く無かったわけではありませんが、運用者の方では割と「報道編集はすぐにできる」という話になり、予定通りのスケジュールで進行し、報道で使うカット編集は、見込み通りスムーズにいったと思います。

 

編集室のHDWS-3000
 
ラックに収められたHDWS-3000
その上にはIngest Stationが設置されている
 
送出用のK2 Media Serverと
K2 Media Client

− スピードが要求される報道編集において、実際にEDIUSを使ってみての感想は?

何よりもレンダリングが少なく、ストレスを感じないところが良いですね。また、回線収録や収録しながらすぐに編集していける点も確実にスピードアップに繋がっていると思います。
トータルでいえば、これまでテープで行っていた早送りや巻き戻し、装填作業などがなくなった、という点は目には見えないので、実感するまでには時間がかかるかもしれませんが、これらもスピードアップの大きな要因だと思います。

− たくさんのスタッフがいる中で、アナログからデジタルへの移行はスムーズに行きましたか?

やはり、リニアの方が速いといった意見もあるにはあるのですが、編集も周辺もどんどんノンリニア化していることは事実なので、運用者にはそこを理解してもらい、みんな頑張って習得して動いてくれています。「自分にはノンリニアの方が合っている」といってくれる人間もいますね。

− これからも、色々なフォーマットが出てくるかと思いますが、業界の将来を見据えたときに、システムに期待する部分は?

テープ時代も、これからのファイルベースを迎えても、ノンリニアメーカーそれぞれの独自フォーマットがあるためなかなか統一は難しいと思います。用途的に得意・不得意もありますから偏るのも良くないと思います。ある程度の混在は仕方ないと思います。多数のフォーマットが存在すると言うことは、コーディング作業を必要とすることは確かですが、今後もいろいろなフォーマットでの入力は対応しなくてはならないと思います。
そうした中で、カノープス製品は多くのフォーマットがきちんと扱えると点から、外から来るものやフォーマットの違いによる取り扱いには苦労はしないのではないか、と期待しました。また、より高速にするための努力をしている、という点も、カノープス製品の選定理由の一つです。

また、送出に関しても、テープはき出しにもファイル変換にも、いずれにも対応してもらえれば、困ることはないのではないか、という考えもありました。イン・アウトの部分での対応力は、他メーカーの製品にくらべ高かったと思います。

− EDIUSを実際に使ってみて、よかったと思える機能などはありますか?

報道特有の面からいうならば、モザイク処理などは簡単にできると思います。現場の人間も「これは使いやすい」と評価も高いです。また音の処理も好評です。モザイクと音、それらの処理が簡単にできることは重要になってきており、それらがスムーズに出来る点は非常に良いと思います。他メーカーの製品には、そうした機能がないものもありましたので。

− その他は如何ですか?

もう一つ大きな要因としては、これまで朋栄さんのVWSをずっと使っていまして、今回もVWSを導入するということになったのですが、カノープスのシステムではVWSとの連携が取れるのも良かったと思います。これまでのノンリニアシステムでは、どうしてもイメージファイルに変換して貼り付ける必要があり、ファイル名の付け替えの手間などで時間がかかっていました。EDIUSなら、タイトルCGとして作ったものが、作ったままの名前で、サムネイルを見ながら取り込んでいけて便利です。これは、報道などから上がっていた要望でしたので、これも、強力な連携の1つかなと思っております。

− ところで、記者さんにノート型編集機:REXCEED LT100を持たせているのは、どういった考えからでしょうか?

スペース的に編集室を増設することが非常にむずかしくて、また、報道なのでニュースの前の時間には、同時に何ブースも使いたいとなります。本格的な編集室の増設がむずかしい中、ノートPCによる編集方法を採用してみようということになりました。カノープスではノート型の編集端末をお持ちでしたし、編集ブースとはいわないまでも、編集できる環境の数を増やすことは可能かと思ったわけです。 それと、プレビュー環境としても活用できています。以前からノートPCを使ってプレビューをするということはしていましたので、プレビューをするのであれば、簡単な粗編集ぐらいはしてもいいのではないか、ということになったわけです。

− 記者さんはすぐに編集が可能でしたか?

もちろん、いままで編集作業がメイン業務ではない記者に、いきなり本格的な編集をしろとは言えませんが、撮影してきた素材をプレビューしながら、不要な部分を落としていけば、編集マンも楽になり、時間短縮にもなる、という話をしましたところ、報道でも結構、乗り気になってくれました。とりあえず、報道記者用に端末としてそれなりの台数を入れることになりました。 ただ、まだ入れたばかりですので、今後の運用は少しずつ進めていこうと思っています。軌道に乗れば、かなりの戦力になると思います。

− カノープスに対して、今後、もっとこういう風にして欲しいと言った要望はありますか?

これまでのスタンドアローン運用の時には、いわゆるエクスプローラみたいな運用でもかまわなかったのですけれども、複数の人間がどこの端末からでも覗けるようにしたりとか、いつでも見たりとかいった状況が望まれますので、共通画面としては、ちゃんと管理された画面でないと、簡単に名前を書き換えられたりとか、どこに登録されたのかがわからなくなったりとかいったリスクのないようなソフトを作らなければならないわけです。現状では根本的に、それがないという状況ですので、そこはぜひ、お願いしたいところではあります。

− 他局に先立ってHDの運用を開始された貴局から、これからHD環境を導入されようとする局などに対して、メッセージをお願いします。

皆様、勉強されて、いろいろと構築案をお持ちだとは思うのですが、やはり、段階的に移行していくとなると、既存の運用に縛られるといったことがどうしても出てきますので、思い切った方向修正というのは難しいと思うのです。
今回、HABでは、思い切って取材機から送出、アーカイブまで一気に替えましたので、否応なく、それに合わさざるを得ないという環境を作りました。新しいものも多くて、実際の運用者には、日々勉強を強いてしまいましたので、大変な苦労が有ったことは事実です。しかし、それくらい意を決してやらないと、従来の運用から脱却できないと思います。

− 実際に、HD化してよかったと思われますか?

今やらないと、この先当分我々の局もできないであろうという思いはありました。報道とは「慣れたテープ運用でこのままずっと行きますか?」と何度も話し合いました。今のままで、10年、15年とやっていくのか、ということになったときに、さすがに報道でも、テープレス化への移行を目指そう、ということになったわけです。 ある程度の苦労は覚悟の上でした。報道資産としては、データがちゃんと管理できないと宝の持ち腐れです。アーカイブを入れるにしても、ちゃんと管理をして、すぐに検索できて、すぐに取り出せる、品質を劣化させずに登録しておきたい、などのの思いがありました。

私自身は、導入してよかったとすでに実感しています。実際に運用にあたっているスタッフたちも、そう遠くないうちに導入してよかった、と実感すると思います。ただ、当初の目標を完全に実現したわけではなく、今は、根幹の道は通ったものの、枝葉の部分はこれからだと思っています。今後これからフォローをしていって、より使いやすいものにして行けたらいいな、と思っています。

【システム構成図】


クリックすると拡大します

北陸朝日放送株式会社(HAB) http://www.hab.co.jp
〒920-0393 石川県金沢市松島1-32-2
電話:076-269-8832

1990年創立、1991年に開局した、石川県のテレビ朝日系列局。「HABスーパーJチャンネル」や「DokiDokiてれび」などの自社制作番組もある。小中学生向けの「KID'S NEWS」は放送800回を超える長寿番組となっている。