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テレビ番組をはじめとする映像の制作現場では、着実にHD化が進められつつあります。愛知県にあるケーブルテレビ局、株式会社キャッチネットワーク様では今回、撮影機材から編集システムに至るまでの全てを一気に刷新するという計画を遂行しました。その大胆なプランの裏側には、これからのシステムに対する大きな希望と、それを実現するために行われた入念な事前検証がありました。
その結果選択されたのが、取材機器としてはPanasonic様のP2システム、そして、編集環境はHDWS-3000とREXCEED MODEL5000を編集端末としたK2 EDIUS Shareによるネットワークシステムでした。
コンテンツ制作本部
編成グループ
放送業務チーム リーダー
松本勉稔氏
コンテンツ制作本部
制作グループ
企画番組チーム サブリーダー
武田尚也氏

【ネットワークの利便性、および、撮影機材と編集機材との相性を最重要視して選択】

キャッチネットワーク様では、来る完全HD送出に向け、編集機材のみならず、取材カメラも同時に刷新するというプランを遂行されました。まずは、新しい業務システムで利用する機器の選定ポイントなどについて、お伺いしてきましょう。

− K2 EDIUS Shareの導入に至った経緯を教えていただけますか?

松本氏:当初からの目標として、2008年の4月からは完全にHDで送出をするという目標があり、それに向けて、取材・編集機器を新しいもので揃えることになりました。その際に実際の編集マンからの一番の要望は、編集効率の改善でした。従来のスタンドアローン環境の編集機では、編集室がすぐに満杯になり取り合いになってしまう状態が多く、そうなると、時差編集をするしかなく、時差出勤などでやりくりしたきたのです。要は編集効率が非常に悪かったということです。その状況を何とかしたいということから、最終的にはネットワーク型システムの導入が検討されました。

− K2 EDIUS Shareに注目されたきっかけは、どのようなものだったのですか?

松本氏:実は、近隣の他局と一緒になって「HD共同研究会」という組織を立ち上げており、そこでは機材などの検証をしているのですが、そこで他局の方たちとも「K2 EDIUS Shareはいいよね、EDIUSはいいよね」とよく話をしていたのです。

− 機器の選定に関しては、制作現場にも意見があったと思いますが、そのあたりはいかがですか?
カメラはPanasonicのP2
武田氏:全てがHDに変わるという話で進んでいましたので、現場としては、編集機材は取材用の撮影機材との相性が最重要課題でした。当社では、PanasonicさんのP2を導入することに決めたのですが、それと一番相性がいいのはEDIUSかな、と。もちろん、以前に使っていた他社製の編集機も候補ではあったのですが、やはり、まずは相性の問題、そのほか、使い勝手やコストパフォーマンスなどについても十分に検討しました。もちろん導入前にはデモ機を使って、うちのスタッフに実際に触らせました。色々なメーカーの編集システムを実際にテストした結果、PanasonicさんのP2と一番うまく合っていたのが、EDIUSのターンキーシステムだったということです。

− 実際に導入された時期と導入を検討された期間について、教えていただけますか?

松本氏:機器の導入は今年(2007年)の8月になります。検討期間は1年ぐらいですね。機器の選定やシステムの仕様が固まってからは、導入や構築は一気呵成に進めました。

− ネットワークシステムを選ばれた最大の要因は、どのあたりにありますか?

松本氏:当社の場合は、編集と送出とアーカイブのそれぞれのサーバーを立てて、完全にテープレスで、というのを一番に考えていましたので、このような仕様がうまく実現できるようなシステムの構築が大命題でした。実際に導入してみてK2 EDIUS Shareのネットワークをベースに、取材機器にPanasonicさんのカメラ、編集機にEDIUSのターンキーシステムを入れてよかったな、と思っています。

【時差出勤や残業を解消。編集作業自体もスピーディに】

続いては、システムの具体的な構成、そして、実際に機器を使用する現場での評判などについて、聞いてみましょう。

− 新しいシステムの構成について、もう少し詳しく教えていただけますか?
K2 EDIUS Shareのラック
松本氏:まず、サーバーに関しては、編集用のサーバーがHD映像で300時間、送出用が350時間、収納できます。アーカイブはBlu-rayで1500時間の容量があります。編集サーバーにはRAID 1とRAID 5、送出サーバーではクラスター構成が組んであります。

− 編集のフロントエンドは、どうなっていますか?

松本氏:編集機は、HDWS-3000が1台、REXCEED MODEL5000が6台の計7台を導入しました。それらの全てがサーバーにぶら下がっている形です。基本的にはどれも同じ仕様にしており、どの編集機でも同じ作業ができます。今はもうまったく、待ち状態はないですね。編集室が満杯で時差出勤や長時間の残業で編集を行わねばならないという非効率な作業も解消できました。まさにネットワークの恩恵ですね。

− システムの構築は順調でしたか?

松本氏:システム構築の期間というのは、1ヶ月間ぐらいでしょうか。8月に全ての機材を導入して、そこからチョコチョコと使い始めて、完全に移行したのは10月ぐらいですね。移行期間では、入ってきた新しい機材はすぐには番組には使わずに、各々が練習用に撮影してきた素材をサーバーに入れ、それを使って新しい編集機の操作に慣れる、ということをしました。いわゆる教育期間ですね。それで、ある程度使える状況になったところから、徐々に番組本番に使っていくようにしました。
武田氏:練習終了の時期は一応、新しいシステムで運用していく番組のチームについては、10月までには完了しなさい、ということになっていました。HDの放送は10月から始めたのですが、使い方を習得したスタッフから始めていくという形でした。

− 使い勝手など、現場での評価はいかがですか?
編集室のHDWS-3000
 
REXCEED MODEL5000も使われている
武田氏:デジタイズが不要ということには、助かっています。新しいシステムでは、デジタイズレスですぐに編集が始められますので、非常に効率的です。また、ネットワークシステムにする以前は、たとえば、違う編集機に移るようなときには、外付けハードディスクの電源を1回切って、それを抜き、違う編集機のある場所に移ってからそれをまた差して、といったことをしていたのですが、それがないというのは大きなメリットだと思っています。

− 作業スピードの面ではいかがですか?

武田氏:たとえば、レンダリングについては、以前の機材ではかなりレンダリングが必要だったのですが、EDIUSターンキーでは、最終的にはレンダリングをしなくてはいけない場合も無いとは言えませんが、普通にエフェクトをかけたり、タイトルを乗せたりしたときには、とてもスムーズに動いてくれますので、スピーディに編集できるようになりました。

− スーパーはどのように作られているのですか?

武田氏:スーパーはほとんど、PCの画像編集ソフトで作って、そのデータをプラグイン経由で入れていくといったことをしているのですけど、スーパーのデータが全て、サーバーに入れておけるというのも効率的な編集に一役かっていると思います。

− システム運用面でのトラブルはありませんか?

松本氏:運用でのトラブルはないですね。思った以上になかったので、僕もビックリしているところです。実際に神戸の方にも行って、組み立ての立ち会いなどもしていますし、はじめから安心していました。

【アーカイブのデータベース化とクロスメディアの促進が新サーバー環境での今後の目標】

最後に、今後、ケーブルテレビ局として目指すところ、また、その目標へ向けて利用していくことになる新システムについての率直な感想などをお聞きしていきましょう。

− 今後の展望について、お聞かせください。

松本氏:システム面では、まず、アーカイブについては来年(2008年)2月ぐらいから工事が始まります。現在は、放送した番組の完パケをテープで保存するという形態なのですが、アーカイブシステムができあがったらBlu-rayを使って、全てをそこで保存するワークフローにしたいと思っています。放送したらすぐ保存し、編集で要らなくなったらすぐに消す、という状況にできます。

− どこの局でもアーカイブのデータベース化が大きな課題となっていますが、そのあたりはいかがでしょうか?

松本氏:アーカイブしたものについては、いつでも二次利用ができるようにしていきたいと思っています。現在すでに、撮影段階で出演してくださる方々に対して、二次使用を許可してもらえるような書類なども用意していますし、また、フォントもちゃんと契約をして、再放送ができるようなものを使う体制になってきています。アーカイブのデータベースには、そうした、取材時にいただいた二次使用の許諾などの情報もメタデータとして映像に付けて、番組をまとめてしまおうと考えています。そうした仕組みも、ネットワークシステムであればうまく構築できると思います。

− 番組制作面における将来構想をお聞かせください。

武田氏:当社の場合には、ラジオとテレビとインターネット、今後はフリーペーパーの発行も予定していて、それらが全部つながって、連動していくようなものを作っていきたいですね。ちなみに、ラジオとテレビとを連動させた番組は、現在すでにやっています。
松本氏:今、そうした番組をもっとふくらませて、インターネットのブログやフリーペーパーなどとクロスできないかというクロスメディアの方向性について、考えているところです。また、眠っているコンテンツを掘り起こそうという試みも始めています。たとえば、年末年始というのは、放送するものがあまりないのです。そのため、再放送に頼るようなところもあるわけですが、ただ単に再放送をするだけでは面白くありませんので、ブログの中に今までのタイトルを並べて、見たいものをブログ上でリクエストしてもらうといった仕掛けを、今まさに、やっているところなのです。

− それでは最後に、システムを入れてみての率直なご感想をお聞かせください。

松本氏:僕の立場からしますと、業務改善が一番の命題、課題でした。それが、サーバーを入れたことで、具体的な数値は出ていないのですが、直感的に改善がされていることははっきりとわかります。K2 EDIUS Shareを入れた価値は十分にあったと思っています。また、取材機器にPanasonicさんのP2を採用したというのは、かなり衝撃的なことだろうと思うのですが、正直なところ、P2とEDIUSという組み合わせにしてよかったなと思っています。
武田氏:現場では作業効率が上がったと実感しています。取材機器にP2を使い、その素材がデジタイズレスですぐに取り込め、みんなで共有し、簡単にデータのやり取りができる、というのは最大の魅力です。操作性は以前の機器とは若干異なりましたが、ノンリニアを使っていた人間が多かったこともあり、スムーズに移行できました。全ての面で、今の所、HDWS-3000とREXCEED MODEL5000、それに、K2 EDIUS Shareには満足しています。


一般的なテレビ局とは違って、ラジオやインターネット、印刷物の発行も予定しているというケーブルテレビ局では、そうした様々なメディアを連動させた新しい形の情報発信を考えるのは当然のことかも知れません。しかし、メディアが多い分、それにもっとも即したシステムを導入・構築していくには、それなりの検討を行う必要があります。キャッチネットワーク様の導入事例は、そうした将来の情報発信形態をしっかりと見据えた、非常に先見性の高いものであったといえるでしょう。


【システム構成図】


株式会社キャッチネットワーク
http://www.katch.co.jp
〒448-0803 愛知県刈谷市野田町大ヒゴ1
電話:0566-27-2112

愛知県刈谷市周辺の6市3町を事業エリアとするキャッチネットワークは、平成3年6月24日に設立された地域密着のケーブルテレビ局。「知識(Knowledge)/娯楽(Amusement)/語り合い(Talk)/文化(Culture)/健康(Health)」を大テーマに、テレビとラジオの放送、インターネットサービスの提供、さらには、地域の災害時の放送対策などにも取り組んでいる。最新のデジタル・光通信技術を活用しながら、さらなる多チャンネル化・双方向化でサービス強化を図っている。