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2007年夏、甲南大学様では、情報教育研究センターの主導のもと、学内の教育関連ITシステムの全面的リニューアルを行いました。そのリニューアルの中でも注目の一つは、HD映像の配信・再生を可能にしたMEDIAEDGE3の導入です。
今までも、SDベースのMEDIAEDGEによる、教室の利用状況をモニター画面から確認できるシステムを構築されていましたが、今回HDベースシステムへリニューアルすることにより、非常に精細でクリアな映像の配信・再生が可能となりました。今回の学内システムのリニューアルは、全般的には時代に即した機器の増強がメインでしたが、その中でも、MEDIAEDGE3は、満足度の高い刷新であったとのことです。

甲南大学 情報教育研究センター
教授 鳩貝耕一氏
  甲南大学 情報教育研究センター
事務室 課長 豊田茂夫氏

【「教室の空き・混み具合をリアルタイムかつ正確に伝えたい」というニーズからHD映像による教室空き状況表示サービスを開始】

甲南大学様では、学生がPCを自由に利用できる教室を複数用意しています。そのような教室はいくつかの校舎に分散しているのですが、わざわざそこまで行かなくても、その教室の混み具合を離れたパブリックスペースのモニターで確認できるシステムが整備されました。最初に、そのシステムの概要について、情報教育研究センターの鳩貝耕一教授と豊田茂夫課長にお伺いしてみましょう。

− まずは、今回導入されたシステムの概要について、お教えいただけますか?

システムが設置された校舎の1つ、2号館
 
エレベーターホールに設置されたモニタ
鳩貝氏:PCを自由に使える教室の利用状況や空き状況を、学生に鮮明なHD映像で案内するシステムです。うちの大学には自由利用教室というのがあり、学生たちはその教室内の空いているPCを、開館時間の間、自由に使えるわけです。しかし、PCが空いているのかどうかは、今までは実際にその教室に行くまで分からなかったのです。当初、自由利用教室は2号館だけだったのですが、現在ではラウンジも含めた各所にありますので、どの教室が空いているのかを事前に確認したい、というニーズがあったわけです。特に、本校舎と西校舎との間ということになりますと、歩くのに時間がかかりますので。

− それで、利用状況を視覚的に確認することのできるシステムが導入されたわけですね。

鳩貝氏:そうです。以前にも、各教室に設置されたWebカメラからの映像を、学内LANを経由してセンターの一ヶ所に集め、MEDIAEDGEをベースにそれらの映像をまとめてプラズマモニターに出すというシステムを構築していました。しかし、そのシステムはパソコンのRGB画面をSD映像のNTSCへとダウンコンバートしていましたので、その画質はあまり鮮明ではありませんでした。文字も動画もフォーカスが甘く、教室内の映像は出ていても、誰がいるとか、何人ぐらいいるとかいうのは、あまりはっきりと認識できない状況でした。ですから、今回のリニューアルに際しては、鮮明な映像を届けたい、という思いが一番強かったですね。

− 現在、何ヶ所の状況がモニターで確認できるようになっているのですか?

豊田氏:現在、5号館が3つ、2号館が1つ、1号館が1つですね。3つの建物に亘る、計5ヶ所の利用状況が一目でわかります。最大15ヶ所の様子を表示することも可能です。モニターの設置場所は、前からあった5号館1階の入り口正面と2号館3階のエレベーターホールに加え、今回、2号館1階のエレベーターホールにも設置しました。

− カメラは何台、設置してあるのですか?

豊田氏:カメラの数は、トータルで28台です。以前は13の教室に各2台だったのですが、それに加えて、2カ所のラウンジに各1台ずつ追加しました。
鳩貝氏:カメラは一応、全ての教室に据え付けてありますが、現在画面に出ているのは、その中から教室やラウンジなど自由利用が可能な5ヶ所に限定しているわけです。カメラはソニー製のものを新しく入れました。新しいカメラではズームやパンができるようになっています。

− モニターには数字も表示されていますが、あれは何を示しているのですか?

空席が少ない教室は赤く表示される
豊田氏:自由利用ができる教室では、学生たちは、自由にPCが利用できるわけですが、利用する際には、学生一人ひとりが持っている固有のIDでの認証(ログオン)を行います。今回は、このログオン情報にもとづいてPCの稼働状況を把握するシステムを構築しました。このシステムと連動して、教室にあるPCの数に対し、空いているPCの数がモニター画面上に随時、表示されるような仕組みになっているのです。空いているPCの数が、あらかじめ設定したしきい値よりも少なくなると、数字が表示されている部分の背景色が青から赤に変わるようになっています。

− それはとてもわかりやすくて、よいですね。ところで、機器選択の決め手はどのあたりにあったのでしょうか?

鳩貝氏:導入の決め手になったのは、やはり、HDです。学生に対してきっちりと教室の混み具合を伝えたい、ということが大前提にありましたので、どれくらい混んでいるのかというのを映像ではっきりとわかるようにしたかったのです。そこで、HDにしようということになりました。

− SDとHDとでは、やはり、かなり違いますか?

鳩貝氏:綺麗さということでいえば、もう、全然違いますよ。まるで別物ですね。もう、SDには戻れません。どうしてもHDにしたかったため、モニターも今回、ハイビジョンタイプに入れ替えました。前のモニターはSDよりもかなり高い解像度でしたがフルハイビジョンではありませんでした。今回は、完全にフルハイビジョン対応のものにしています。HDにしたことで、実際にモニターに出力される画面構成も、教室の様子がより大きく鮮明に映し出されるように変えることができました。

− 導入に際して、設定されていた条件には、どのようなものがあったのでしょうか?

鳩貝氏:必須条件は、クリアなHD映像が見られること、モニター内をマルチ画面にできること、指定した時間できっちりと切り替わることなどです。それらの条件とは別に、学内ネットワークにはかなりのトラフィックが流れていますので、それらを圧迫しないということも重要でした。今回のMPEG-HDを使ったシステムでは、そういう意味では、データ量的にも助かっています。

− 具体的には、どの程度の情報量が流れているのでしょうか?

鳩貝氏:ネットワークの流れを見ていますと、25Mbpsぐらいはコンスタントに使われています。フレーム数はフルフレームのフルハイビジョンです。実際に流しているカメラ映像は、1秒間のコマ数を低く設定してありますが、状況を確認するという用途としては、何も問題はありません。このシステムであれば、普通のフルフレーム動画をハイビジョンで流しても、綺麗な映像が楽しめるでしょう。

【コストパフォーマンスと機器の信頼性に高い評価】

続いては、HD対応のMEDIAEDGE3を決めるまでの経緯や実際に導入しての感想などをお聞きしていきましょう。

− 今回構築されたシステムが正式稼働したのは、いつのことですか?

施工直後のサーバールーム
鳩貝氏:8月には仮運用が終了し、正式には、後期の授業が始まった(2007年)9月19日からです。

− 夏休みの期間を利用して、システムのリニューアルをされたわけですね? 構築は順調でしたか?

鳩貝氏:順調でした。もちろん、問題はいろいろと出ましたが、一つひとつ解決し遅延もなく最終的な稼働にこぎ着けました。問題といっても、システム導入時には必ず発生するような些細なものばかりで、システムが動かないといったような大問題はありませんでした。

− 機器選択やシステム構築に関する検討期間は、どのくらいあったのですか?

鳩貝氏:システムの入れ替えを考え始めたのは、だいたい2006年の夏頃です。業者を決定したあと、様々な提案を検討しフィックスしたのが、(2007年)5月頃です。実は、最初の提案はSD仕様だったのですが、その後、HDのデモを見るなどした結果、やはりHDの方が断然によいと判断し、少々予算を増やしてHDにしたのです。

− 実際に構築を担当する業者さんの動きは、いかがでしたか?

鳩貝氏:今回のプロジェクトでは、教示装置などのAV系に関しては内田洋行さんがシステム構築を手がけました。内田洋行さんは、とてもチャレンジ精神が旺盛な会社でして、そこで出されてきたアイディアを実現するためにカノープスさんとジョイントを組んでもらった形です。フレキシブルな対応ができる会社同士のチームプロジェクトでしたので、構築作業は非常にスムーズに運びました。
MEDIAEDGE3に関しては、旧システムのSD版MEDIAEDGEの評価が非常に高く、機器に対しては全幅の信頼を置いていました。導入に際しては、他メーカー製品との比較・検討も行いましたが、信頼性とコストパフォーマンスの面でMEDIAEDGE3の圧勝でしたね。

− 実際に導入してみて、いかがでしょうか?

各教室に設置されたリモートカメラ
 
教室内の様子が一望できる
鳩貝氏:システム構築、特にコストパフォーマンスの部分では、かなり厳しい目でチェックをいたしました。大学の執行部から、コスト重視の方針が打ち出されておりましたし、予算を抑えつつも、よいシステムを作らねばなりませんでした。結論から言うと、仕上がりには非常に満足をしております。若干コストはオーバーしましたが実際に入れてみて大満足です。本当にHDの綺麗な映像が安定して映し出されますので、とにかく万々歳です。今回の教育システム更新の中でも、特にMEDIAEDGE3のシステムは、本当によかったなぁ、コストをかけた価値があったなぁ、と実感しています。

− コストパフォーマンスのほかに、MEDIAEDGE3のメリットはどのあたりにありますでしょうか?

鳩貝氏:まずは、機器の信頼性ですね。機器自体に信頼度がなければ、大学には導入できません。それに、機器が安定して動いてくれるということは、導入後に発生する保守作業が最小限に押さえられるということです。実際、導入後に、ほとんどメンテナンスをする必要がないというところは、ありがたいですね。前回のMEDIAEDGEでも故障など全くありませんでしたし、メンテナンスといっても定期点検ぐらいでした。今回のシステムでも、セットアップさえすれば、あとは勝手に動いてくれますので、はっきり言ってもう、ほとんど触ることはありません。

− MEDIAEDGE3に対する全体的な評価をいただけますか?

鳩貝氏:MEDIAEDGE3に対する率直な評価としては、学内のネットワークを利用して、高解像度の綺麗な映像が比較的低いビットレートで配信できる、というところになります。本学にも、そういった需要が他にたくさんありますので、今後ともぜひ、MEDIAEDGE3をはじめとするカノープスの先進機器を使ってのHDのソリューションを増やしていきたいと考えております。
豊田氏:予算には当然枠がありますので、その中でベストなチョイスができたのは、MEDIAEDGE3という機器があったからだと思います。映像は今や、静止画ではなく綺麗な動画が当たり前の時代ですから、このような背景にあって、MEDIAEDGE3は期待通りのクオリティを発揮してくれています。
鳩貝氏:教育システムというのは、常に新しい方向を見ながら、先進的な技術を取り込んでいくことが必要だと思います。そうした点で、今回、MEDIAEDGE3を導入したことで、他の大学に負けないような先進的な映像システムの構築が実現できたと思います。

【学内のどこからでも、映像の配信ができるような形のものを考えていきたい】

最後に、新システムを使っての将来構想や、これからシステム導入を検討されている教育機関に対するメッセージなどを語っていただきました。

− 今回導入された新しいMEDIAEDGE3のシステムを利用して、チャレンジ的な新しいプランはありますか?

豊田氏:まだ実現はできていないのですが、たとえば、緊急時のコンテンツを映像で発信するとか、オープンキャンパスなど学内行事に関連したコンテンツの配信は是非トライしたいですね。
鳩貝氏:実際に、今回のシステムでは、メッセージが下に2行、出せるようになっていまして、そこにニュースを流すことも可能になっています。ただ、教室前には電子掲示板というのがありまして、文字による情報提供に関しましては、そちらをメインで使っています。いずれにせよ、カメラと回線は用意されていますので、たとえば、著名な方が来校され講演されるような場合など、その設備を使って生の映像をモニターに流すといったライブ放送もやろうと思えばできます。

− 映像をライブラリー化してオン・デマンドで流すなどのプランは、どうですか?

鳩貝氏:ビデオ・オン・デマンドについては、映像コンテンツをライブラリー化していこうといった話もあります。ただ、人手や時間などの問題から、現時点ではまだ踏み出せていません。しかし、特定の講座などを録画して配信するというのでしたら、時間もかかりませんし、魅力がありますね。
豊田氏:学内にはキャリアセンターというところがあり、本学のOBやOGのインタビューなどを取材しているのですが、それを映像ライブラリー化していくといった使い方も面白いと思います。e-ラーニングなどの色々なコンテンツにしても、学内の様々な部署がそれぞれに持っているのですが、それらを統合・整備して、授業などに使えるようにしたいところです。事務局としては、まだ準備段階ですが、学生に対してテレビのニュースのようにお知らせができるようになるとよいと考えています。
鳩貝氏:将来的には、SD、HDも含めたビデオ映像の配信をトータルにサポートしていきたいな、という希望は持っています。学内のどこからでも、映像の配信ができるような形のものを考えていきたいですね。カメラを持っていって、そこからの映像を配信できるようになれば色々と用途が広がっていくと思います。

− コンテンツの制作部分を、学生さんたちに手伝ってもらうという手はありませんか?

豊田氏:もちろん、そのあたりを学生自身にやってもらうということもあります。学生たちの自由な発想で、色々な映像を作っていってもらえるといいですね。そうなればきっと、面白いものを作ってくるのではないかと思います。このセンターでは、ビデオ機材などの貸し出しもしていまして、学生たちはそれらの機材を使って、動画の卒業アルバムを作るなどといったこともしているのですよ。

− すでに動きはあるのですね。あとは、上手に利用してもらうだけですね。

豊田氏:実は、当センターには、学生へ向けてのキーワードとして「情報を学び、情報を活かす」というのがあるのです。学生にはこのコンセプトを体現するような新しい映像システムを活用した様々なチャレンジをして欲しいですね。

− 現在、映像関連のソリューションの導入を考えられている教育機関や公共施設は、多いと思います。そうした機関に対して、先達として、メッセージをいただけますか?

鳩貝氏:今後はHDでの映像システムを構築していくべきだと思います。HDというのは、家庭ではずいぶんと普及してきていますが、大学などではまだSDが多いのが現状かと思います。ぜひ今後は、HDのソリューションをどんどん考えていっていただきたいなと、私自身は思っています。
豊田氏:我々も今、企画中ですが、動画による各種情報の配信・再生など、今までにはなかったようなチャレンジをしていってもらいたいなと思いますね。MEDIAEDGE3は、新しいチャレンジに相応しいソリューションだと思います。

施工: 株式会社内田洋行 教育システム事業部 ICT西日本営業部様
  富士通株式会社 神戸支社 第一営業部様



【システム構成図】



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甲南学園は、1910年(明治43年)に地域の実業家たちの努力によって誕生した学校で、関西地区ではその名を知られた有名校。来年(2009年)には甲南中学校の誕生から90周年を迎えます。学内のIT化にも積極的で、1951年には他に先駆けて、コンピューターによるデータ処理教育を導入。学内のネットワーク化も早く、1995年にはすでに、インターネットへの接続環境も整備しました。同大学内にある情報教育研究センターは、「全学生への高度情報教育」の実現をテーマに、1996年に正式設立。以来、e-ラーニングコンテンツ開発をはじめとする各種の教育関連IT環境整備や情報リテラシー教育、国内外にまたがる教育研究活動のIT化支援など、幅広い業務を受け持っています。