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2006年に惜しまれつつも世を去った故今村昌平氏(2006年5月30日逝去、享年79歳)は、世界で最も権威のあるカンヌ国際映画祭において、1983年の『楢山節考』と1997年の『うなぎ』で最高賞である「パルムドール」を2回受賞した映画監督として知られています。その故今村監督がテレビ・映画界のために設立したのが、日本映画学校様です。

お忙しい中、EDIUS事例取材にご協力いただいたお三方へのインタビューからは、日本映画学校様において育まれている「映画、映像に対する熱い思い」を知り、感じることができるでしょう。そして、その“熱い”教育現場では、多くの編集機材の中からトムソン・カノープスの「EDIUS」が選択・導入され、積極的に活用されています。
 

【映像制作を通じ、コミュニケーション能力を高める人間教育を実践】

日本映画学校 学年主任
映像ジャーナルコース担任
安岡卓治氏

映像ジャーナルコースを担任されている安岡卓治氏には、日本映画学校の特色となっている「人間教育」について、また、映像の現場におけるデジタルテクノロジーなどについてお話しいただきました。

− はじめに、日本映画学校さんのプロフィールと特色をお教えください。

日本映画学校は1975年に、映画監督の今村昌平が日本映画の将来を案じ、監督やスタッフを育てようという趣旨で設立しました。その当時の日本映画界の主だった監督や技術スタッフたちを集めて、横浜に学校を創立したのが始まりです。
本校では「制作を実践しながら学ぶ」という方針のもと、実習を主体にした授業・カリキュラムを組んでいます。また、本校の講師には、現場で映像の仕事をされている方々に集まっていただいています。こうした教育方針は、私どもが経験の中で得た「実際に撮影しながら、編集しながら、音を付けながら技術や知識を身に付けるのが一番効果的だ」という結論からきたものです。

− 卒業された方たちは、主にはどのような職業に就かれるのでしょうか?

本校では33年間で5000人以上の卒業生を送り出していますが、その多くが撮影や編集をはじめ、いろいろな領域で作品作りの現場で働いています。

− 卒業生で活躍されている人には、どのような方がいらっしゃいますか?

最近でいえば、映画監督の三池崇史さんや佐々部清さんがいますね。松竹さんの「釣りバカ日誌」のスタッフの中にもたくさんの卒業生がいます。またユーロスペースで公開された『ブリュレ』という自主映画を作られた故林田賢太監督(2008年11月1日急逝・享年32歳)もここの卒業生です。

− この学校での経験は、現場でどのように活かされているのでしょうか?
今村昌平氏の掲げた理念
 
映像制作にはコミュニケーション能力が不可欠
 
学生達が受賞した数多くのタイトル

創設者の今村昌平は「映像制作を通して人間のことを学ぼう、人間を知ろう、自分自身を知ろう」というテーマを掲げました。映画作りというのは、実は人間教育としての大きな意義も持っているのです。本校ではグループで制作を行いますが、そこで問われるのはコミュニケーション能力なのです。
人間教育を基本とする本校の教育方針は、現在の日本社会が抱える「いかに自分の思いを伝えるか、相手の思いを汲み取るか」といった大きな問題への一つの回答と言えるでしょう。例えば、それまで他者とほとんどコミュニケーションを取らなかった学生が、実習を通して様々な人たちとコミュニケーションを取っていくようになっていきます。この学生が卒業後、映画や映像の仕事に就く、就かないにかかわらず、映像制作による人間教育の成果かと思います。

− 映像制作のテクノロジーはフィルムからデジタルへと移行してきたと思うのですが、教育の現場でも変化はありますか?

フィルムが持つ、「実際に触れる」「光にかざせば画像を見ることができる」「長さと時間の関わり」といったアナログの素晴らしさや、非常に長期的に持続できるという価値の高さは、教育においてはとても有効なものです。ですので、撮影の実習では16ミリフィルムが主軸となっています。その一方で、ポストプロダクションの領域においては、数年前に100%デジタル化がされました。

− 現在のデジタル技術に対しては、どのような実感をお持ちでしょうか?

現在のデジタル技術の良さは、開発の段階からフィルムの良さを徹底的に研究した上で組み立てられたシステムであるということですね。実際に触ることはできませんが、1フレームずつ確認することもできれば、長さをタイムラインという一見リニアなグラフィックスで表すこともできます。いまのデジタルでは、それまでのビデオ時代の歯がゆさを一気に飛び越えて、“フィルムのリニアなリアリティ”が実現されています。その良い例がEDIUSです。EDIUSを見ると、現在のデジタル技術の進化と成熟を感じます。

− アナログの良さも知っていて、かつ、デジタルの便利さも習得した卒業生さんたちから、新しい才能が生まれてくるのが楽しみですね。

第二、第三の三池さんや佐々部さんになりそうな学生は大勢います。ただ、社会で広く認知されるまでの道のりは非常に長いものです。監督であれカメラマンであれ、現場を経験しながら技術やノウハウを身に付け、自分自身を発見し、オリジナリティを追求していかなければなりません。本校の卒業生たちの特長は「たたき上げ組」であることです。三池さんが才能を開花させたのは30代後半、佐々部さんに至っては40代ですよ。今、二人とも非常に大きな規模の作品を託されています。絶大な信頼を得ているわけです。そういった作り手たちはまだまだ、本校のOBたちから生まれてくると思いますね。

【総合的にみて、EDIUSに優位性があることは間違いありません】
日本映画学校
技術部担当主任
浜口文幸氏

技術部担当主任の浜口文幸氏には、編集システムとしてEDIUSを選択された理由はどのあたりにあったのか、実際の教育現場においてEDIUSはどのような点で有用なのか、などについてお話しいただきました。

− 編集用機材として、EDIUSを15セット導入していただいていますが、現場ではどのように使われているのでしょうか?

本校では、1年生は16ミリフィルムで実習を行いますが、2年生になると、演出、脚本、撮影、録音、編集、そしてドキュメンタリーと専攻するコースに分かれます。全コースで、ビデオ技術基礎、デジタル基礎といったものはやりますが、そのうち特にドキュメンタリーを専攻する「映像ジャーナルコース」では、2〜3年生はビデオ一本でやっていきます。EDIUSはそこでの制作用ツールとして使われています。

− EDIUSが選択された理由はどのあたりにあったのでしょうか?

学生たちは、長短あわせて年に3〜5本ぐらいの作品を作り上げます。作り始めてから完成させるまでの作業を何往復するか、ということがすごく重要だと我々は考えています。つまり、完パケを完成させるまでの過程を重要視しているわけです。その際に、「止まらない」ということがとても大切な要件だったのです。

− といいますと?

学生たちは膨大なテープ素材をもとに、試行錯誤をしながら作品を作っていきます。その際に、担当の講師は学生たちに常時張り付いているわけにはいきません。何かトラブルが発生した時には、学生たちは自分達で解決しなければなりませんので、そこで進行が止まりロスタイムが生じます。何よりも作品作りの試行錯誤がそこでストップしてしまいます。学校では徹夜をしてカバーするといったことは出来ないので、「落ちる・止まる」というトラブルは極力さけたいのです。その点、EDIUSの安定性は特筆に値します。EDIUSの大きな特長である「落ちない、止まらない」というところを最大限に評価し選択しました。

− HDの編集についてはいかがですか?

基礎を教えるという点では必ずしもHDの必要はありません。快適に動くことが重要なのです。その点ではむしろSDの方が便利です。つい最近までは「HDは重たい、面倒だ」と考えていました。しかし、EDIUSならばHDもSD同様に快適に編集できますので、HDの編集に対しての考えを改めました。本校ではHDVベースですが、カメラはすでにHDになっています。2009年からは編集も含め本格的なHD体制に移行する予定です。

− EDIUSの操作はいかがですか?
良好な操作性により、習熟も早い

わかりやすいですね。「優れた操作性」というのはプロの編集マンにとってもありがたいものですが、誰でもが短時間で使いこなせるようになるEDIUSのわかりやすさは、特に編集初心者の学生にとっては最適だろうと思います。いまの学生はWindowsパソコンを持っていて、基本的な操作はすでに理解していますから、編集を教えるときにはEDIUSの機能解説から入っていけばよいのです。これはとても楽ですね。時間とコストの節約になります。

− そのほかに、EDIUSのメリットとして挙げられる点はありますか?

レンダリング不要のリアルタイム能力の高さも良いです。モニタにはリアルタイムの映像が出ていますので、常に最終結果を見ながら作品作りをしていくことができます。これは、カット編集のタイミングの他に、カラーコレクトをするとか、ディゾルブとか、テロップのサイズを考えるといった「編集の間合い」を学生たちがリアルに養えることになります。リアルタイムで快適に動く心地良さは、EDIUSならではですね。EDIUSであれば、教える側も添削しやすいです。

− 添削がしやすいというのは、具体的にはどういったことなのでしょうか?
モニタに映し出されるリアルタイム映像

実は、学生たちが作ってくる仮編段階の作品の90%くらいは、ほぼOKなのです。ですが、残りの10%が、プロになる壁なのです。そこで、学生たちと議論し添削をしていくわけですが、学生たちがイメージした完成形に近い形に到達するには、フレーム単位の修正や、何と何をどの順番でどう掛け合わせて、どの程度処理をするのかといった、言わばノウハウを見せてやることが教えることなのです。その際にEDIUSであれば、ビデオフィルターなどはすごくわかりやすいですし、その違いをすぐにリアルタイムで見比べることができます。また処理手順のデータも保存することができるわけです。

− ドキュメンタリー系の作品を作るということでは、いかがですか?

ドキュメンタリー系、ライブ系の素材の編集といったらEDIUSしかないですよ。トムソン・カノープス系でしかできません。これは、ホントにそう思います。学生たちは、最初は操作も覚束ないのですが、それが卒業制作ともなるとほとんどの機能をマスターします。実は、ノンリニアをガチンコで使いこなした経験があるということは、就職にも有利なのですよ。

− それは、どういうことですか?
EDIUSを徹底的に使いこなす実習

学生たちは制作を通じてEDIUSを徹底的の使い込みます。このような経験は採用する側でも高く評価します。就職面接の際に「どのようなソフトを使って作品を作ったか?」と聞かれるようです。EDIUSが制作現場に浸透していることを実感します。EDIUSを使いきって卒業していくことは、学生にとっても大きなプラスですし、私たちも教え甲斐があります。

− 最後に、EDIUSへの総合的な評価をお聞かせください。

EDIUSは「最もテープに近い感覚でスムーズに編集できる優れたソフト」だと思います。しかし、その良さを知らない人が多すぎます。トムソン・カノープス製品は「食わず嫌いの王者」ですよ(笑)。実際に食べてみた人は100%、「美味しい!」って言いますね。私の周りでも、試しもせずに他のソフトを選択するプロが多いのは残念です。プロとしてプロジェクトごとにソフトを使い分けることは仕方がないのですが、総合的には間違いなく、EDIUSに優位性があることは間違い有りません。

【地域を活性化し、人間を育てる 〜 映像を通じて文化的な資源作りを目指す】
日本映画学校
理事 副校長
千葉茂樹氏

日本映画学校の副校長を務められている千葉茂樹氏は、「映像作りは、地域を活性化し人間を育てる文化的な資源作り」と熱く語られます。このような文化的資源作りに対して、メーカーはどのように関わるべきなのか、など伺ってみました。

− 日本映画学校さんでは、どのようなお考えのもと、教育にあたっているのでしょうか?

日本映画学校は「映画のプロを育てよう」という学校ですが、育てようといっても、いきなりプロができるわけではありません。映画を作る側の人間になるには、どれだけたくさんの映画を観てきたか、ということが重要です。本校に来る学生たちの中にもあまり映画を観てこなかったという人が少なからずいます。このような現状から、「小さいときからもっと、映画を好きになってもらいたい」との思いを強く持っています。いま、劇場に行って映画を観る習慣が無くなってきています。映画というのは、みんなと一緒に観る、暗いところで集中して観る、ということがとても大事なのです。私は最近になって、「シネリテラシー」ということを考えるようになってきました。
※シネリテラシー:映画〈シネマ〉を深く読み解き、また、映画を制作するという過程を通じて学習意欲と能力を高めつつ、豊かな人間育成を目指す教育体系

− シネリテラシーについて、具体的にはどのような活動を展開されているのでしょうか?

映画を教育の現場に使う、という考えはオーストラリアでは2000年から行われ、素晴らしい成果が出ています。そのオーストラリアの現状に出会って、私の思いが「映画を地域の中の文化財として扱いたい」といったことだとわかったのです。
ここ、川崎の新百合ヶ丘という地で「KAWASAKI しんゆり映画祭」を14年間やってきています。そこでは、小中高校生に映画作りにチャレンジしてもらう企画もやっています。映画の制作は共同作業ですので、コミュニケーション能力の育成にもなります。コミュニケーションができるようになると能率が上がります。そして向上心も出てきます。私たちはそうした効果に気づいたのです。

− それは素晴らしいですね。

私は、「映画が好きな子どもたちが増えていって欲しい」と思います。映画の制作を通じて、成熟した人間になって欲しいのです。いろいろな人間、多様性に出会った時に『違いを排除するのではなく、違いを尊敬に変えられる』成熟した人格が形成できればよいと考えていますね。それが、映画と社会と教育というものの役割だと思います。 このような私たちの活動に対して川崎市も応えてくれまして、「映像の町、川崎」というのを打ち出すようになりました。今年(2008年)の7月には地域と官民が一体となった推進フォーラムもできたのですよ。

地域の活性化も担う日本映画学校様

− 地域の新しい文化作りが始まったのですね。

川崎という街は南と北に分かれており、本校の位置する北部は新興住宅地で、歴史は浅く、めぼしい文化はありませんでした。そこに、この映画学校ができました。「地域の中で映画学校は何ができるのか?」と考えたときに、子供を集めて草野球をやるように、映画作りのサークルを作ってみようということになりました。それがずっと続いてきたのです。活動が継続的になってきますと、前年の学生たちがサポート役に就いてくれるようになります。人と人との繋がりですね。地域の中の人間関係が非常に高まってきて、地域社会を文化的に向上させていこうという動きになってきたのです。

− 映画祭では、どのようなことが行われたのですか?

KAWASAKI しんゆり映画祭は毎回1週間だったのですが、今年は3週間やりました。子どもたちの作った映像も上演しました。オーストラリアからのお客様も交えてのフォーラムもやりました。2時間以上のフォーラムでしたが、あっという間に終わってしまった感じでしたね。その場には川崎市長も来ていまして盛り上がりはすごかったです。オーストラリアからの3名のお客様はフォーラム以外のところでも、学生や子どもたちといろいろなコミュニケーションを取られていましたね。

− トムソン・カノープスのようなメーカーは、日本映画学校さんや川崎の推進フォーラムなどの動きに対して、どのようなスタンスで関係を持っていったらよいのでしょうか?

まずは人と人との出会い、繋がりがとても大切です。その点では、本校とトムソン・カノープスとの関わりは良い例になっていると思います。学生フォーラムが毎年オーストラリアで開催され、本校も参加していますが、その際に、トムソン・カノープスにはサポート役に回っていただいています。これは、単なるビジネスの枠を越えたものです。トムソン・カノープスの製品は、国際的な文化交流の仲立ちになっているのです。

− 出会いから繋がり、そして、信頼関係ですね?

私たちとメーカーとの関係というのは、一つの文化財を分かち合う間柄だと思います。メーカーの皆さんと我々とでできることというのは、この世の中でよい社会を作っていくための文化的な活動だと思っているのです。つまり、メーカーが持っているものと使い手の持っているものとが合わさることで、地域をどれだけ活性化できるか、どれだけ人間を育てられるか、ですね。ものを作るという同じような立場にある者同士、単なるもののやり取りではなくて、その共同作業から生まれ出てくるのは文化的な資源なのです。私たちは、EDIUSを介しながら、トムソン・カノープスのようなメーカーと一緒に文化的な資源作りをしていきたいと思っていますよ。

 
日本映画学校
http://www.eiga.ac.jp/
〒215-0004 神奈川県川崎市麻生区万福寺1-16-30
TEL:044-951-2511
映画監督の故今村昌平氏が「既設のレールを走りたくない若者たち、常識の管理に甘んじたくない若者たちよ、集まれ」と呼びかけ、1975年に設立した日本で唯一の「映画・映像作りの現場で働く人」を育てる専門学校。1985年には現在の地(小田急線・新百合ヶ丘駅前)に移転。「映画演出」「脚本演出」「映像ジャーナル」「撮影照明」「映像編集」「音響クリエイター」などのコースが用意され、卒業生のほとんどが映画やテレビなどの業界へと進んでいます。映像の現場で仕事に携わる人たちを講師に実践本位の教育が展開され、1年間で約150本の作品が学生たちの手によって生み出されています。

 
 
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