2004年10月9日、アフガニスタンでは国家始まって以来の選挙(大統領選挙)が実施された。NHKの取材班はその状況を伝えるため、首都カブールに自前のフライアウェイ(衛星伝送装置)を持ち込み、生中継・伝送態勢をとった。
使用した衛星はAsiasat3s(105.5E)のeast asia beam、運用ビットレートは4Mbpsであった。
取材に使用するカメラはソニーのHDW-750カムコーダーで中継・伝送においても、D1-SD SDIデジタル出力を使用した。NHKではダウンコンバート素材を利用する場合、なるべく素材の画角を活用するため、スクイーズで横方向を圧縮し、アップコンする際に横に伸張する方法を採る。素材がデジタルということもあり、なるべく解像度の劣化を防ぐ方法である。
また、今回そのような機材構成のため、一般持ち込み素材(PAL素材)、DV小型カメラでの取材素材についてデジタルでの素材であることが望ましい。特に音声系はエンベデッドでの処理が可能であることから、エンコーダ(Tandgerg E5714)の入力設定の変更も必要なくなり、運用効率が向上する。
今回、カノープス(株)の協力によりDV-SD SDIコンバータ(ADVC-1000)を借用、アフガンTV(RTA)提供のPAL DV素材を伝送する機会が多く(主にカルザイ大統領の会見映像)、容易に伝送することが出来た。また素材の荒編についてもノートPCでノンリニア編集し、ノートPCからダイレクトに伝送を実施した。加えて、夜間にアメリカ大使館ちかくにロケット弾が打ち込まれるという事件があり、この取材をローカルスタッフがDVで取材したということがあった。これについてもコンバータで伝送し、インタビュー部分を切り出して伝送し、容易に乗り切ることが出来た。
加えて、今回は実運用しなかったが、HDW-750のSD SDIをノートPCにとりこみ編集、その出力をエンコーダ入力したり、高画質DVのワイドモードを使用して、ワイド素材を取り込んだりすることが可能である。
海外での運用の場合、地元放送局や借り物伝送設備はPAL素材しか受け付けないことが多い。この場合重たい方式変換器を使用する必要がある。ただしこの場合、移動しながらの編集は不可能であるし、必要なカットを選んで伝送することになる。ADVCを使用した場合、ノートPCにデジタルで取り込んだ後、移動しながら編集その素材をDVに戻せば、そのまま伝送することが可能となる。(条件としてNTSC-PAL簡易再生機能のあるデッキが必要!)
今後、ソニーのHDV規格のカメラが海外進出してくることも考えても、カノープスの機器のような有用なコンバータを現場にどんどん取り入れていく必要があると考える。
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