■はじめに
最近のほとんどのDVDプレイヤーはD1(コンポーネント)出力を持っています。そして最近のTVはほとんどがコンポーネント入力を装備しています。しかし一般のDVカメラはコンポーネント出力をもっておらず、コンポジットかSで接続するのが一般的です。そこで一般的なDVカメラとテレビモニタをコンポーネントで接続した場合、DV圧縮方式にどれほどのメリットをもたらすかどうかを比較をしました。
■実験方法
色成分の周波数特性を評価するのに適したパターンをPC上で合成し、これをPC上のソフトコーデックによりDV圧縮し、DVテープに書き戻しました。これは色相が180度反転するグリーン−マゼンタのパターンで、かつグリーンの輝度をマゼンタに近くなるように落としています。これは、輝度が大きく異なる色を並べてしまうと、例え全く色が出ていなくても輝度の違いだけで縞模様が見えてしまい、あたかも色が出ているように見えるからです。よって、輝度を調整してやることにより、色が表示できてない場合は縞のパターンがつぶれてしまいます。これにより各出力形式で縞のパターンを観察することにより、色成分の周波数特性を比較することができます。
また、DV圧縮の元の色情報は、輝度成分に対して4分の1なので、4ドット幅のカラーバーを並べました。さらに位置が1ドットでもずれると色が正しく表示されないため、位置も揃えてあります。なお、左端の部分は元の色を確認するための部分です。
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図1 テストパターン
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■実験環境
実験環境は、DVカメラからのDV出力をADVC-500に入力し、そこから同時に出力される、S、コンポジット、コンポーネント出力を複数のモニタにより表示させました。
今回実験に使用したモニタは次の3種類です。
モニタ1 |
一般的なインターレース方式でコンポーネントD1入力付きモニタ29インチ |
モニタ2 |
ノンインタレース(プログレッシブ)方式D3入力付きモニタ36インチ |
モニタ3 |
業務用高解像度モニタ20インチ |
■検証1:コンポジット入力による表示の場合
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モニタ1 コンポジット入力
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モニタ2 コンポジット入力
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モニタ3 コンポジット入力
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コンポジット入力の場合、モニタ1、モニタ2ではテストパターンについていけず、全く別の縞模様が出てきてしまっています。またモニタ3では辛うじて縞模様が確認できますが、発色はほとんどありません。
■検証2:S入力による表示の場合
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モニタ1 S入力
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モニタ2 S入力
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モニタ3 S入力
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S入力でも、モニタ1では縞のパターンがほとんど確認できません。モニタ2では縞のパターンは表示できていますが、色は正しく出ていません。モニタ3では縞のパターンがよりはっきりと表示されていますが、やはり発色が正しくありません。
■検証3:コンポーネント入力による表示の場合
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モニタ1 コンポーネント入力
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モニタ2 コンポーネント入力
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モニタ3 コンポーネント入力
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コンポーネントでは、特にモニタ1で劇的な変化が見られ、色のついた縞模様が確認できるようになりました。
またその他のモニタ2、モニタ3でも縞のパターンがよりはっきりし、発色も元の色に近くなっています。
■検証4:コンポーネント出力を調整した場合
※通常のご使用では、このような調整を行うことはできません。
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モニタ1 コンポーネント入力(出力調整)
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モニタ2 コンポーネント入力(出力調整)
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モニタ3 コンポーネント入力(出力調整)
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コンポーネント出力を調整したことにより、特にモニタ3では色の再現性がかなり向上しました。
■結論
以上の実験から、コンポーネントはコンポジットやSよりも色情報を正確に伝え、クリアな表示を行えることがわかります。このような結果になる原因は、Sやコンポジット信号での接続ではコンポーネント信号に対し、NTSC方式の宿命である色信号に対するエンコード、デコードのプロセスが入るからです。
これを避けるために以前からプロ用の機器では、色信号に対するエンコード、デコードのプロセスが入らないコンポーネント接続が使用され、現在の標準となっています。
高画質を目的にしたDVだからこそ、1394インターフェースからDVビデオストリームを直接受けて表示できるコンポーネント接続が有効なのです。
※これは当社内で検証した結果に基づいています。すべての環境において、同様の結果を得られることを保証するものではありません。
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