Canopusからの提案 Canopus


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極寒の地ではバッテリーの消費こそが最大の問題

 北緯74度のカナダ・レゾルルートベースキャンプでは、零下39度の強風が吹き荒れていました。「こんな状態で、カメラは本当に大丈夫なのだろうか?」油圧式の三脚の中に入っている油さえ凍ってしまい、液晶も完全に凍りきってしまいました。さらに最悪なことに、マイクのケーブルまでもが凍ってしまい、連結部分が切れてしまったのです。
 そうした悪条件の中でもアウトドア・エキップメントメーカーのノースフェイス社が作成した保温グローブのおかげで、カメラ本体はどうにか通常に機能していました。しかし、最大の問題であるバッテリーはまだ未解決のままでした。バッテリーは新たに提供されたもので、通常時にDVカメラとの併用であれば、約10時間は撮影可能なのですが、やはりこの寒さでは1時間程度しか持ちません。
 バッテリーの問題をいかに解決するか。遠征において撮影を担当することになるホン・ソンテク隊員と協議し、寒さに弱いバッテリーを外気に触れさせないように包帯を二重、三重とぐるぐる巻きにしてみたところ、とりあえず30分ほど延長して作動するようになりました。
 「たった30分しかもたないぞ」という私に対して、ホン・ソンテク隊長は、「30分しかもたないだって? 30分もだ。30分も延長できるなんてついている。どうせ一日の撮影時間なんて、せいぜい頑張ったところで30分くらいだ」と、力強く答えてくれたのでした。「これで、バッテリーの問題は解決したも同然だ」
 あとはただ、北緯90度を目指すのみ、です。



北極点に向けての旅をたった一人で撮影

 私は、遠征隊の北極征服と、ホン・ソンテク隊員の撮影の成功を心から祈りました。韓国探検史上、初となる「山岳グランドスラム」の挑戦と同時に、韓国初の極地でのHD撮影成功の歴史にもなるからです。
 地獄の遠征の中、たった一人でHDカメラを持ち歩き続けたホン・ソンテク隊員の苦難は、想像を絶するものがあります。分厚い防寒用手袋をはめていても凍てつく両手で、彼は撮影を続けたのです。歩きながら撮影する間、カメラの画面に映し出される映像に心を奪われ、割れた氷板から滑り落ちることもあったといいます。極寒の海に溺れながらも、彼は、片手でカメラを高くかざし、その記録を守ろうとしました。
 遠征から戻った後、彼はこう言いました。「この遠征が、私の人生の中で最後になるかもしれなかった。だからこそ、命をかけて撮影したこのカメラを守りたかったのだ」と。
 彼は、今回の遠征において、たった10本しか撮影できなかったことを悔やんだのですが、5分ごとに電源を切りながら一日30分しか撮影できない最悪の条件下での10本は、大河ドラマの長編に匹敵する量といっても過言ではないでしょう。氷の世界とブリザード、そして北極の太陽……。彼が収めた映像からは、極寒に生きる生命のありさまを、まざまざと感じとることができました。




 パク・ヨンソク隊長の北極遠征隊は、予定よりも6日早い54日間の行軍の末、人類最初の山岳グランドスラムを達成しました。専門家たちは、地球の温暖化のため、極地への探検は今後ほぼ不可能だと予測しています。ならば、この極地への撮影もまた、これが最後の機会となるのかも知れません。
 最初で最後の苦難の撮影記は、こうして終わりを迎えました。
 遠征隊が北極点に達したあの生々しい「歴史的映像」は、現地でそのまま編集され、すぐに送ることができました。まさにこれはソニーのHDR-FX1とカノープスのEDIUS NX for HDVが生んだ快挙に他なりません。

 パク隊長はこう言いました。
 「山岳グランドスラムは私一人では絶対に成し遂げることはできなかった。苦難の遠征から決して逃げようとしなかった真の勝利者、遠征隊員たちとの合同達成なのです。」



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